離婚調停で、審判に移行した『子供との面会交流』。
先日、調査官が実施した『親子交流場面観察』の調査報告』も上がり、それに対する反論と新たな主張として、相手方代理人弁護士が提出した準備書面の一部始終である。
実際の『面会交流審判申立事件の準備書面』
以下、提出された『面会交流審判申立事件の準備書面』の本文です。
見やすいようにテキスト化しています。
(スキャンしてツールでテキストに変換したので、変換ミスなど誤字があるかもしれません。)
ここでは、
申立人=私
相手方=元奥さん
となっています。
子供の名前、また場所など一部の固有名詞は、〇〇や代名詞などに変換しています。
例えば[子供][元奥さんの実家の県]といった形で。
(ここから本文)
調査報告書に対する相手方の意見は以下のとおりである。
1 申立人と相手方の間に高い葛藤があること
(1)申立人らは、一度,相手方が離婚を前提に別居した後,話し合いにより[元奥さんの実家の県]で同居を再開したが,双方の関係は修復されておらず,結局3か月程度で破綻した。
申立人と相手方は,現在,離婚訴訟中である。離婚訴訟になるような事案は離婚件数全体の2%未満であり,それだけで相当高葛藤な事案と言える。
(2)また,これまでの主張書面のやり取りを見ると,申立人と相手方は,過去に起きた同じ出来事に対して全く違った受け止め方をしており,話し合いによってお互いを理解することが困難な状態である。
相手方からすると,申立人はどういう理由でどんなタイミングで機嫌を損ねるかわからず,一つ言うと10倍ほどになって返ってくるため,申立人に対する恐怖心が非常に強い。
他方で,申立人は,裁判所で法的拘束力のある取り決めをしたとしても,相手方は必ず面会交流を制限するようになるだろうことを確信しており,相手方に対する不信感は相当なものがある。
(3) このような状態であるから,申立人と相手方には、何か決め事をしなければならない時に,互いに意見を出し合い,妥協点を探るような通常の「話し合い」がまともにできる信頼関係はない。
2 面会のたびに,葛藤が高まっていること
(1)申立人と相手方は,別居後しばらくは,相手方の母親の協力により当事者同士が対面することはなかったが,相手方の母親が入院した昨年8月終わり頃から,当事者同士で受け渡しをするようになった。
その直後,相手方は,面会の帰りに申立人から「1つ言っていいか」と声をかけられただけで激しい動悸がして,全身に拒否反応が出て,申立人の言葉が頭に入って来なかった。
相手方は,その後,メンタルクリニックを受診したところ,「恐怖症性不安障害」で治療を要する状態であると診断された。医師の意見としては,恐怖対象となっている申立人との接触を減らすことが何より効果的とのことで,面会は月1回とすることが適当であるとのことであった。
それにもかかわらず,申立人との協議が整わず,現在まで1年,月2回,直接の受け渡しをせざるを得ない状態が続いている。
その結果,申立人と相手方は,面会の受け渡しの際に,わずかな会話のやり取りしかしていないにもかかわらず,物事の受け取り方の違いから,相手に対する悪感情を増幅させることになった。
(2)相手方は,調査官調査の面談の際に,調査官から「申立人は週1回、9時から5時,そのうち1回は宿泊付きとすることを希望しています。これに対してはどのような意見ですか?」と尋ねられた。
相手方は,調査官から上記の申立人の過剰な要求を聞かされただけで,動悸が激しくなり、声を出すこともできない圧迫された状態となった(そのため,同席していた相手方代理人が代わりに,相手方の状況を説明した)。
相手方は,第三者を通じて申立人の要望を聞かされるだけでも,心理的に圧迫され,通常の精神状態を保つことが難しくなるほどであるから,申立人を目の前にすると,[子供]の身の回りのことなど些細な連絡事項の申し送りをすることも困難となるし,申立人から不意打ちで何か言われると,どう回答してよいか答えに詰まってしまう。
申立人は、自分の発言が相手方にストレスとなることを理解せず,自分の発言にそのような意図はなかったのに,悪いように話を作り替えられているとか,意図的に悪く受け取られていると批判するばかりで,相手方の心情に対する配慮は見られないため,当事者間のこのような関係は改善する見込みがない。
3 両親間の葛藤が[子供]に与える影響
申立人と相手方は,同居時からできるだけ[子供]の目の前で言い争いをしないように配慮していたが,乳幼児は言語能力が未発達な分,非言語コミュニケーション力が高いため,実際に目の前で言い争わなくても,両親間の関係が悪いことは幼児であった[子供]も察知していたと思われる。
また,別居してからも,相手方は調停が係属している間,紛争のストレスにさらされている。そして,面会の度に,[子供]の面前で申立人の言動に動揺するなど,精神的なストレスを抱えることになるため,それが[子供]に悪影響になるおそれが高い。
4 年齢に応じた面会頻度と時間
(1)調査官は,[子供]の◯歳という年齢に応じて1回の時間を今より短く,回数は月2回を維持するのが相当としている。
確かに,[子供]の年齢からすると,1回の面会時間が短いほうが負担は少ないと言えるかもしれない。
しかし,[子供]は、1歳前後の乳児というわけではなく,現在,◯歳◯か月,もうすぐ◯歳になる。
◯,◯歳の子供の成長は,一緒に住んでいる大人でも目を見張るほどのすさまじいものがあり,数ヶ月で驚くほど成長を遂げる。[子供]も,もう数ヶ月もすれば、休日はお昼寝もなく朝から夕方まで遊ぶこともできるようになる。
よって、1回の面会時間を現状の5時間から8時間に拡張しても,さほどの問題はない。
(2)また,親子交流観察の場面では、慣れない場所だったこともあり,相手方と離れるまでに多少時間がかかったが,最終的には申立人がいれば,知らない男性(調査官)が同席していても安心して遊び始めることができた。
それは、[子供]が申立人を自分にとって安心できる大人であると認識している証拠であって,申立人と[子供]との間には,すでに親子の信頼関係は確立されているのであるから,面会頻度は,月1回でも,良好な関係が維持していくことは可能である。
(3)この点,調査官意見として,必要に応じて1年後に頻度及び時間の変更や宿泊の可否について協議することが相当と考えると記載されている。
これは、◯歳という子供の年齢を考えて,発達に応じて頻度と時間を変更することが望ましいという趣旨であると思われるが,8ヶ月調停を続けても協議がまとまらず,審判にまでなった本件において,わずか1年後に当事者同士で協議ができるはずはない。
先述したとおり,この年齢の子供の成長は驚くほど早いのであるから,すぐに再協議が必要になることを避けるために,少し先を見据えて,最初から月1回の頻度とするのが相当である。
5 子供の利益になる面会交流を実現するためには,面会頻度は月1回が妥当である
(1)別居親と交流する機会を多く持てることが,[子供]のメリットになることは否定しない。
しかし,本件は,当事者双方の関係がこれだけ高葛藤であり,残念ながら面会の回数を重ねる度に相手に対する悪感情を募らせるのであるから,面会が父親と母親の対立を深める結果となってしまっている。
両親間の対立を防ぐために,審判において,面会日時と時間を固定する方法がしばしば用いられるが,それは真に子の利益になる面会交流からは離れてしまうことを忘れてはならない。
真に子供の利益になる面会交流を実現するためには,両親間の最低限の信頼関係と刻々と変化する子の体調や生活状況,年齢に応じた興味関心などに合わせた柔軟な交流が望ましい。
(2)また,審判において,ある程度のルール作りはできたとしても,まだ◯歳の小さな子供の受け渡しにおいては,当日の体調や身の回りのことなど,双方でコミュニケーションを図らなければスムーズに行かないことも必ず出てくる。
申立人と相手方の主張がここまで食い違いを見せていることからしても,今後も面会のたびに些細なことがもめ事の原因になることが容易に想像できる。
そうであれば、面会頻度を増やすことは,子供のためにしているはずの面会交流によりかえって両親間の対立を深め,ひいては子供への悪影響となるため,本末転倒である。
(3)これに対し,相手方が直接受け渡しをしない方法でそれを回避すべきという考えもあり得るが,相手方が第三者機関以外で受け渡しを頼める人はいない。
第三者機関を利用することになれば、費用の負担がある上に、父親に会いに行く際に,第三者を介してしかやり取りをすることができないということを[子供]に知らしめることになり,両親間の対立が深刻であるというメッセージを[子供]に伝えることになる。
月1回であれば、なんとか直接の受け渡しができるところ,わざわざ月2回に回数を増やして,第三者機関に頼らざるを得なくなるのは、本末転倒である。
(4) これまで,子供と別居親との面会交流は,子供の年齢や生活状況,親子の居住地の距離,親の仕事の都合や生活スタイルなど様々な条件を考慮しても,調停では月1回と定めることが圧倒的多数であった。
それは,離婚によって一度は夫婦関係が破綻した両親が,子の父と母という立場で最低限協力し合い,子供が成人するまでの間の長い期間,別居親と子供との交流を途絶えることなく緩やかに継続していくのに適した頻度であったからに他ならない。
ましてや審判の場合は,調停で合意ができないほどに高葛藤な事案であるから,面会の頻度は,月1回より少なくなる傾向にある。
(5)以上より,本件においては,面会頻度は月1回,時間は9時から5時までとするのが相当である。
6 原則実施論に対する疑問
(1) 最高裁は,子供と別居親との面会を原則実施する方針を打ち出し,その根拠として,離婚後に別居親と子供の交流があったケースとなかったケースを比較するとなかったケースよりあったケースのほうが子供の発達のよい影響が見られたという調査結果をあげている。
しかし,離婚後も子供と別居親が交流を続けられた背景には,そもそも両親間で,離婚に際して一旦は破綻した夫婦関係を,子供を通した両親としての新たな関係を再構築することができたという事情があると推測される。
つまり,別居親と交流したことそれ自体というより,別居親との交流が可能な程度に両親間の対立が緩和されていたことが別々に暮らすことになった両親の間を行き来する子供の発達に好影響を与えたからに他ならない。
離婚訴訟を提起しなければ,離婚条件についての協議をまとめることができなかったほどに高葛藤の両親間において,交流を続けたケースと続けなかったケースで,子どもの発達に有意差があったという根拠はない。
(2) 面会交流は,本来人と人の関係に基づく接触であって,当事者の関係が良好でなければスムーズに実施することができないものである。その性質上,当事者の希望に反した内容を強制すればするほど,よい交流とはならず,家庭裁判所が一番目指すところである「子の福祉」に反するおそれが高くなる。
家庭裁判所は,紛争状態にある当事者のその後の人生に重大な影響を与える決定をするということを十分に自覚した上で,最高裁の採用する原則実施論に基づき,面会交流の日時を拡大することばかりに目を向けるのではなく,個別具体的な事案に応じて慎重に判断していただきたい。
以上
添付された証拠説明書
抜粋すると以下になる。
●標目
面会交流審判例の実証的研究
●作成年月日
判例タイムズNo.1292(2009/5/15)
●作成者
横浜面会交流研究会(横田 昌紀他)
●立証趣旨
面会交流調停において非監護親との面会は月1回とされることが通例であったこと,審判に至るケースでは、双方の葛藤が強く,信頼関係を維持することが困難な状況にあり,このような状況下で調停と同様の回数の面会を実施することは子の福祉に反する結果になるおそれが懸念され,その回数は調停より少なくなる傾向にあること
4日後に追加で提出された証拠説明書
抜粋すると以下になる。
●標目
子の安全・安全から面会交流を考える~DV/虐待を中心に~
●作成年月日
H25.4.6
●作成者
日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会
●立証趣旨
両親の仲が悪いということは子供に計り知れない苦痛を与えること,子供は赤ちゃんの頃から主体的に人間関係にアンテナを張っていること(小さいから分かっていないということはないという意味),父母の紛争は子の脳の発達にとって有害であること,子供の健全な発達を保障するためには,母親の安心・安定を守ることが肝心であること,これらのことから,父母の紛争を拡大し,母親の心の安定を阻害するような頻度の面会交流を命じることは,結局は子の利益にならないこと
この準備書面を見て反論
この相手方の主張は、面会の度に父母の悪感情や、両親の不仲が子供に与える悪影響を前面に出し、面会回数を減らそう減らそうとする内容です。
でもこの『両親の不仲=面会回数を減らす理由になる』という公式が成り立つことは、逆に危険とも取れるので、それを折り込み反論しました。
これに限らず、一つの事柄でもポジティブ・ネガティブなど、どちらにでも取れますからね。
私目線ではありますが、相手方弁護士は本当に悪意の塊ですね。まぁ、それが弁護士の仕事であり、それが裁判なのかもしれないですが、ホント不毛な戦いです。
また証拠説明書の添付資料も結構古いデータのものだったので、そこも合わせて反論に折り込みました。
離婚調停から審判に移行した『子供との面会交流』。 審判の日も近づき、いよいよ佳境です。 このページは相手方が面会交流を減らすために主張として提出してきた『準備書面2』への反論として、私が提出した『準備書面2に関する意見書』の全文です[…]